大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)6072号 判決

原告

駒場節子

原告

駒場誠

右法定代理人母

駒場節子

右両名代理人

高橋融

沢口嘉代子

大森鋼三郎

被告

藤井鋼業株式会社

被告

久保田恵次

右両名代理人

高柳貞逸

第一、主文

一、被告ら各自

(一)  原告節子に対し、金六、二〇六、六六七円

(二)  原告誠に対し、金一〇、四二三、三三三円および右各金員に対する昭和三九年六月一二日から完済にいたるまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二、原告その余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は被告らの負担とする。

四、この判決一項は仮に執行することができる。

第二、本訴請求

「一、被告らは各自

(一) 原告節子に対し金六、七一一、八二九円、

(二) 原告誠に対し、金一〇、四二三、六六〇円、

および右各金員に対する昭和三九年六月一二日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決ならびに仮執行宣言。

(死亡自動車事故損害金および不法行為後の遅延損害金請求)

第三、争いない事実

一、死亡自動車事故発生

とき、  昭和三九年六月一一日午後七時五〇分頃

ところ、 埼玉県、北葛飾郡杉戸一、一四二先国道四号線南北道路上

被害者、 亡駒場泰三(小型乗用車、千、五、せ、九五一五号―以下亡泰三車という―運転中)

態様、  亡泰三は右路上を南進中、センターラインをこえてきた対向車、訴外水野昭一運転のダンプカー、埼、一、せ、一九六九号(以下水野車という)と衝突、ために頸部骨折、頭部打撲、内臓破裂により即死した。

二、責任原因について

同時刻頃、亡泰三車の後方から同じく南進して、右衝突現場附近の東側(進行方向左側)畑埋立地中に突入して停止した大型貨物自動車、いすず六トン車六二年型品、一、せ、〇九八二号は、被告会社の保有車で、被告会社従業員久保田が、その業務のため運行していたものである。

なお、亡泰三車の後方から同時刻頃南進していた車両には訴外宇井芳夫運転のダンプカー、千、一、せ、三七五一号(以下宇井車という)があり、右現場附近に追越禁止区間があつた。

三、損害の填補

強制保険金として、原告節子は金三三三、三三三円、原告誠は金六六六、六六七円を受領し、それぞれ損害に填補した。

第四、争点

一、原告らの主張

(一) 被告らの責任原因

1 被告久保田の過失責任

本件事故は、被告久保田が亡泰三車の第一後続車宇井車にさらに後続してたところ、追越禁止区間の指示表示があるのにこれをおかしてセンターラインをこえて進行方向右側を通行し、前方約八〇メートルに対向する水野車を発見しながらそれに直前接近するまで漫然同一速度、態様で走向あわてて亡泰三車と宇井車の間をすりぬけて勢余つて畑中に突入するという無暴な運転をしたため、その避譲措置を期待して対向してきた水野車があわや衝突寸前、狼狽と被告車の前照灯に眩惑されて、とつさにハンドルを右に切りセンターラインをこえることとなつたので、亡泰三車と水野車の衝突を招いたところによるもので、むしろ訴外水野の過失に競合、先行する被告久保田の重過失によるところ大であることが明かで、同被告は民法第七〇九条の賠償責任がある。

2 被告会社の運行供用者責任

従つて被告会社は運行供用者として自動車損害賠償保障法第三条による責任を免がれない。

(二) 損害の発生

1 逸失利益

亡泰三は事故当時三三才の健康な男子で、日興電機工業株式会社に勤務し、別紙給料所得見込表昭和三九年度の項記載の所得を得ていたから、事故死がなければ平均余命の範囲内で少くとも会社定年五五才に達するまで二二年間就労し、その間各年に別表給料所得見込表記載の収益を得た筈である。

なお亡泰三の生存する場合の生活費は月額所得の三分一であつたから、これを控除し、右期間の逸失利益の総額の現価を年五分の割合による中間利息控除のホフマン式計算方法により算出すると少くとも金一二、一三五、四八八円を下らない。

ところで原告節子は亡泰三の妻として、原告誠はその長男として各相続分に従い、三分の一の金四、〇四五、一六二円、三分の二の金八、〇九〇、三二六円を下らない額の請求権を相続した。

なお、昭和四三年以後の賃金賞与のべースアップ、その他の昇進昇絡を見込むと亡泰三の逸失利益はさらに右額を三百万円以上、上廻る筈で原告らは少くともさらに各百万円以上の請求権の相続があるわけであるが、適確な立証に足りない時は右各百万円は慰藉料として請求する。

2 慰藉料

ところで原告節子は三一才の若さで一生を托した夫と死別して、幼児をいだく境遇におちいり、原告誠もまた四才にして父を失う不遇におとしめられ、これらを慰藉するには少くとも各金二百万円の慰藉料が相当であり、前項末尾の逸失利益が認められない時はこれを慰藉料として補い、各三百万円が相当である。

3 未済損害総額

従つて何れによるも原告らの各損害合計額から強制保険金による填補分を差引くと、被告らに請求できる損害額は左のとおりとなる。

原告節子 金六、七一一、八二九円

原告誠 金一〇、四二三、六六〇円

二、被告らの主張

「被告らの無責」

被告車は亡泰三車の後方約三、四〇メートルを走行していた第一後続車で、宇井車は第二後続車でそれに続いていたもので、被告車が追越をはかつた事実は全くない。事故現場にさしかかつた際、対向する水野車が亡泰三と正面衝突してこれを横転させながらさらに突進してくる態勢だつたので、被告久保田はやむなくこれとの衝突をさけるため急激にハンドルを左方に切るほかなく、そのため道路左側の畑中に突入停車したもので、運転上の過失がないことは勿論のこと、本件死亡事故とは無関係であつて過失責任を生じようがない。原告らの告訴にかかわらず被告久保田が処罰はおろか、刑事訴追自体も受けていないことは右事実の証左である。

本件道路は巾員九メートルの担々たる舗装道路で両側は広々した畑中を走る一本道で天候も良好であつたから、亡泰三が前方注視義務を怠つていなかつたならば、対向水野車のセンターラインをこえる運転上の過失も事前に発見し得て、これを回避することができた筈である。しかるに亡泰三は酒気をおびた上スピード超過のまゝ、前方注意を怠つたため、訴外水野の過失と競合して本件事故を招来したものである。

従つて被告会社にも運行供用者としての損害賠償責任を生ずる余地はなく本件請求は全くいいがかりというほかない。

第五、争点に対する判断

一責任原因

(一) 被告久保田の過失責任

本件事故の原因については、亡泰三車の対向車水野車が後述するようにセンターラインをオーバーした被告車に気をとられ、また時速約五〇キロのスピードのまゝ前照灯を下向きにしていたため、亡泰三車に気ずかなかつたことと、被告車との衝突の危険を感じた途端、狼狽のあまりあやまつてブレーキを右に切つたため矢庭にセンターラインをこえて衝突にいたつた過失によるところも無視できないことであるが、被告久保田が、先先行の亡泰三車と被告車の間を走行していた先行宇井車を、追越禁止区間を無視して追越にかかり、センターラインをこえて対向車道に入つて進行し、対向水野車と衝突の危険を感じるまであえてそのまま進行し、あわてて左へ切つて道路左側(東側)の畑の埋立地に突つこんだ過失が先ず第一原因を与え、しかも事故を誘発した重大な過失というべく、むしろ事故に対する過失評価においては水野車「三」に対し被告車「七」の過失割合とすべきである。したがつてたとい被告車自体亡泰三車と接触がなかつたといえ、事故発生に因果関係ある過失というべく、被告久保田は民法第七〇九条の賠償責任を免がれない。

(資料<略>)

被告久保田本人の供述、甲第一四、二二号証(被告久保田の警察官、検察官各面前調書)、甲第八号証(前記水野昭一の警察官面前調書)は右認定に反するところであるが、いずれも左の理由で採用できない。

すなわち甲第八号証の記述で、水野は亡泰三車が追越しのためセンターラインをこえたような表現をとつているが、先行車は存在しないようにのべて、前後矛盾し、前記認定のような事実を記述、ないし証言する証人水野昭一、甲第二四号証(同人の検察官面前調書)と明かにくいちがい、また証人宇井芳夫の証言ならびに同人の事故直後の警察官面前調書(甲第一〇号証)、検察官面前調書(甲第二一号証)の記述は最も客観的な目撃者として如実に前記認定のような事実をのべていること、などから、右水野の記述は弁解心理と何者かの示唆とによる事実の隠蔽とみるほかない。

被告久保田本人の供述、同人の甲第一四、二二号証の記載は終始自己の運転上の過失を否定するところであるが、事実の説明にあいまいなところがあり、右記同様、信用性ある証拠とくいちがうところから、到底採用できない。乙第六号証の存在も右認定を左右するものでなく他に右認定をくすがえすに足る証拠はない。

(二) 被告会社の運行供用者責任

そうするとその余の判断をまつまでもなく、被告会社は自動車損害賠償保障法第三条により賠償責任を免れない。

二損害の発生

原告らの主張事実の範囲内で(原告らは各百万円については慰藉料と選択的に逸失利益の相続分節子四、〇四五、一六二円誠八、〇九〇、三二六円に加えて請求しているものと解する。)左のとおり損害の発生が認められる。

(一) 逸失利益

亡泰三は事故当時満三三才の健康な有能なる技術系中堅職員として別表昭和三九年度の項記載の所得を得ており、事故死がなければ、平均余命の範囲内で少くとも会社定年五五才に達するまで二二年間は就労し、その間に各年順、別表給料所得見込表記載の収益を得たものと認められる。

そして亡泰三の生存する場合の各年度における生活費約三分の一強を控除した純収益は左のとおりとするのが相当である。

第一年度 金六〇〇、〇〇〇円

第二年度 金七〇〇、〇〇〇円

第三年度 金八〇〇、〇〇〇円

第四年度 金九〇〇、〇〇〇円

第五年度乃至第二二年度各金一、〇〇〇、〇〇〇円

右逸失利益の現価の総額を年五分の割合による中間利息控除のホフマン式計算方法(年別万未満切捨)によつて算出すると左のとおり総計金一三、六四〇、〇〇〇円となる。

600,000×0.95=57万円

700,000×0.90=63万円

800,000×0.86=68万円

900,000×0.83=74万円

1,000,000×(14.58−3.56)

=1,102万円

57万+63万+68万+74+1,102万万

=1,364万円

そして原告節子は亡泰三の妻として、三分の一、金四、五四〇、〇〇〇円、原告誠は三分の二、金九、〇九〇、〇〇〇円あて、(何れも万未満切捨)の請求権を各相続分に従い、承継取得した。

(資料<略>)

(二) 慰藉料

不慮の事故により、妻として、また子として、亡泰三を失つた原告らを慰藉すべく、各金二、〇〇〇、〇〇〇円あてが相当である。

(資料<略>)

(三) 未済損害総額

そうすると原告らの各過失利益、慰藉料合計額から強制保険金の填補分を差引くと、被告らに請求できる損害額は左のとおりとなる。

原告節子 金六、二〇六、六六七円

原告誠 金一〇、四二三、三三三円

三結論

そうすると原告らの請求は主文の限度で認容すべきである。訴訟費用につき、民訴法第九二条、第九三条、仮執行宣言につき同第一九六条を適用した。(舟本信光)

故駒場泰三氏給与所得見込表

年度

(昭和)

年令

基本給月額

諸手当

月額合計(A)

給与年額

(A×12)

賞与(B)

年額合計

(A×12)+(B)

三九

三三

四一、二〇〇

二二、九七一

六四、一七一

七七〇、〇五二

二二九、八〇〇

九九九、八五二

四〇

三四

四四、二四〇

二四、〇〇六

六八、二四六

八一八、九五二

二五四、三〇〇

一、〇七三、二五二

四一

三五

四八、八五〇

二七、四七六

七六、三二六

九一五、九一二

三〇九、〇〇〇

一、二二四、九一二

四二

三六

五四、五七〇

三一、三八一

八五、九五一

一、〇三一、四一二

三七五、〇〇〇

一、四〇六、四一四

四三

三七

六二、一九〇

三四、〇二八

九六、二一八

一、一五四、六一六

三七五、〇〇〇

一、五二九、六一六

六一

五五

合計

三二、二三七、五一六円……(C)

退職金見込額

62,190(基本給月額)×51.8(支給率)×1.3(役職係数)=4,187,874円

昭和39年支給済退職額  801,500円

うべかりし退職金  4,187,874円?801,500円=3,386,374円………(D)

(C)+(D)=35,623,890円

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